【コラム】🌸 4月入社でよくある労務トラブルと、その未然防止策(2026.4.3)
4月は「気持ちのいいスタート」と「トラブルの芽」が同居する季節です。
桜の季節に新しい仲間を迎える——そんな清々しい気持ちとは裏腹に、4月は労務トラブルが発生しやすい時期でもあります。特に中小企業では、採用から入社までの準備が手薄になりがちで、「そんなつもりじゃなかったのに」というすれ違いが起きやすいのが実情です。
今回は、現場でよく相談いただく3つのトラブルと、その予防策をわかりやすくお伝えします。
⚠️ トラブル① 労働条件の「認識のズレ」
「聞いていた話と違う」は、入社後すぐに起きます。
「給与は月30万と聞いた」「残業はほぼないと言われた」——採用面接での説明と、実際の労働条件通知書の内容がずれているケースは、思った以上に多く発生しています。
| よくある認識のズレ | 起きやすい原因 |
|---|---|
| 基本給と手当の内訳が曖昧 | 面接では「月収」だけ伝えていた |
| 勤務地・業務内容が違う | 異動範囲を明示していなかった |
| 残業の実態が違う | 「原則なし」と伝えていた |
| 試用期間中の給与が下がる | 採用時に説明していなかった |
2024年4月の法改正(労働基準法施行規則改正)により、就業場所・業務内容の「変更の範囲」の明示が義務化されました。書面での明示はもはや「最低限の義務」です。
🛡️ 防止策: 労働条件通知書は「渡した」で終わりにせず、内容を口頭で説明する時間を設けることが大切です。「基本給〇〇円、各種手当〇〇円で合計〇〇円です」と丁寧に伝えるだけで、後々のトラブルをぐっと減らせます。
⚠️ トラブル② 試用期間の「万能感」という誤解
「試用期間中だから辞めさせられる」——これは大きな誤解です。
「試用期間さえあれば、合わなければいつでもやめてもらえる」と思っている経営者の方は少なくありません。しかし判例(三菱樹脂事件・最高裁昭和48年)は、試用期間付雇用契約を**「解約権留保付きの労働契約」**と位置づけており、本採用拒否は正当な理由がなければ許されないとしています。
「試用期間中だからといって、自由に解雇できるわけではありません。」
【試用期間中の本採用拒否が認められる主な要件】
✅ 採用時に知ることのできなかった事実が判明した
✅ 勤務態度・能力に具体的な問題がある
✅ 問題を指摘・指導した事実がある(記録あり)
✅ 社会通念上、本採用を拒否することが相当といえる
なお、入社から14日を超えた試用期間中の解雇には、解雇予告(30日前)または解雇予告手当の支払いが必要です(労働基準法第20条)。
🛡️ 防止策: 試用期間中も面談記録や業務評価を残す習慣をつけましょう。「問題があると気づいていたが何もしなかった」という状況が、後から最もリスクが高くなります。記録は会社を守る「保険」です。
⚠️ トラブル③ 研修・残業に関する「ノーカン神話」
「研修中は残業代がいらない」は、根拠のない思い込みです。
「研修は仕事じゃないから」「まだ戦力じゃないし」——こういった理由で、研修時間や残業代を支払わないケースがあります。しかし厚生労働省のリーフレットでは、次のように明確に示されています。
「業務上義務づけられている研修・教育訓練は、自由参加でない限り労働時間に該当する。」 (出典:厚生労働省「労働時間の考え方:研修・教育訓練等の取扱い」)
| 研修の種類 | 労働時間の該当 |
|---|---|
| 会社が義務づけた集合研修 | ✅ 該当する(残業代必要) |
| 就業後の強制参加の勉強会 | ✅ 該当する(残業代必要) |
| 任意参加・不参加ペナルティなし | ❌ 該当しない |
また、「固定残業代(みなし残業)を設定しているから大丈夫」という声もよく聞きますが、固定残業代が有効とされるには**「何時間分の残業代か」が明確であること**が必要です(労働契約法・判例上の要件)。新入社員への説明が曖昧なままでは、後からトラブルになる可能性があります。
🛡️ 防止策: 研修スケジュールを組む段階で「これは労働時間に当たるか?」を必ず確認しましょう。また、みなし残業を採用している場合は、入社時のオリエンテーションで何時間分の残業代が含まれているかを明確に説明することが重要です。
💡 まとめ:最初の「丁寧さ」が、その後の関係を決める
3つのトラブルに共通しているのは、「最初の説明と確認が不十分だった」という点です。
法的なリスクを避けるためだけでなく、新入社員との信頼関係を築くための土台として、入社時の丁寧なコミュニケーションはとても大切な投資です。
🌱 入社直後に行った丁寧な説明が、その後の何時間もの紛争リスクを減らす。
「うちは小さい会社だから書類は後でいいか」——その一言が、後々大きなコストになることも少なくありません。スタートを丁寧に整えることが、人と組織が共に育っていく第一歩です😊
≪ 【コラム】🌱 新入社員の早期離職を防ぐ「オンボーディング」の極意〜 最初の緊張がほぐれてきた | 【ネクレア通信】4月号を公開しました|4月施行の法改正・給与計算への影響をまとめて確認 ≫
